「紅白を見たらロックが演歌のポジションに来た」という意見についての考察が秀逸すぎる!
紅白における「演歌」はもはや古く、90年代のポップスロックが今の40~50代にとっては演歌のようなポジションになったと言われるが、実は演歌は新しい流行歌で、ポップスロックはそのオルタナティブな存在だったとする考察が反響を呼んでいます。
「紅白を見たらロックが演歌のポジションに来ていた」発言があまりにバズっているので、もう少し歴史的なことからきちんと書いておく。そもそも「演歌」というのは、古い音楽のように思われているが、形が定まったのは1960年代。そして1970年代に全盛を極める。つまりかなり新しい流行歌。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
だから「演歌は日本人の心のふるさと」みたいな表現は、演歌の売りとなる部分を過剰に強調したキャッチフレーズのようなもので、実は日本古来の音楽でも何でもない。ただ、いわゆるヨナ抜き音階や、こぶしの回し方などは日本の伝統芸能に沿うもので、多くの人にとって親しみやすかった。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
そして考えればすぐに分かる通り、「60年代に確立し70年代に全盛を極める」という歴史は、ロックとそのまま重なる。そして日本の大衆音楽、とりわけテレビで流れる音楽としては演歌の圧勝。ロックはあくまでもオルタナティヴミュージックだった。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
リスナーも演奏者も含めて、とりあえず「ロック者」としておくが、これによって演歌はロック者の仮想敵となる。ロック者から見た演歌は、「保守反動」「音楽的退化」「それでいて大衆には受ける」という敵対要素満載だったから当然だ。つまりは政治における右派と左派の対立みたいなもの。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
70年代中盤までのロックは、日本ではとんがった若者の音楽だったし、「日本人のやるロック」などまだヨチヨチ歩きの状態。一般人気でははるかに及ばない。そのルサンチマンもあって、ロック者は演歌を撲滅すべき敵とみなした。もちろん紅白の出場歌手は演歌と歌謡曲が大半だった。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
その辺の状況を知らないと、山下達郎が「自分たちの世代が歳をとった時 演歌を聴かずに済むために音楽やっている」と言ったことの意味が分からないだろう。また、そんな半世紀前の価値観からアップデートされていないと「そもそもロック者は紅白などに出ない。出ているのは偽物だ」となるわけだ。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
日本人の歌うロックがお茶の間(死語)でも市民権を得たのは、いわゆる「ニューミュージック」が人気を獲得した70年代の終わりから。その点で、テレビに積極的に登場したサザンオールスターズやゴダイゴらの果たした歴史的役割はきちんと再評価されるべきだ。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
それでも演歌のファンはずっと演歌を聴いていたので、80年代になっても演歌は元気だった。ただロック/ニューミュージックのアーティストが、当然のことながらファンと一緒に歳をとり、それに見合う音楽を作るようになったため、それらの音楽で育ったファンがあえて演歌に移行することもなかった。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
結果 世代交代で演歌のマーケットは縮小し、今はロックがそのポジションに来ているわけだ。今後、古典的なロックは、ファンの高齢化と死去に伴い、演歌がたどったのと同じ道を歩み、マーケットはますます縮小していくことだろう。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
前に述べたように、反骨精神のようなものは、別にロックの専売特許ではなく、さまざまな大衆音楽にあるものなので、「ロックとは音楽ではなく生き方のこと」といった精神論は、私にはどうでもいい(それ、無理にロックと呼ばんでもいいだろう…)。ロックとはあくまでも音楽のスタイルだ。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
なお歴史的なことは、ステレオタイプにおそろしく単純化してある。実際はもっと複雑な要素がからみ合っているわけだが、それは分厚い本でも書かないと説明しきれないものなので、大目に見て欲しい。ただ、今の二十代とかは、この程度のことも知らない可能性があると思って書いてみた。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
最近の若者は、配信によって古い音楽も新しい音楽も一緒くたに聞くため、意外と古い音楽について詳しいという話はよく聞く。それは事実だろうし、プラスマイナスで考えればプラスの方が大きいだろう。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
だが、そのような聞き方をすることで、音楽の歴史的な文脈に無頓着になるという弊害はありそうだ。それによって取りこぼされる貴重な情報も少なくないと思う。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
ただこれは「レコード」という記録媒体が発明された時点で、すでに起きたこと。我々の大半は、当時の歴史的文脈など知らないままクラシックに耳を傾けるし、その地の文化など知らぬままワールドミュージックを聞くこともある。それに比べれば、まだマシな方か…
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
なお、ロックのリスナーは「歌謡曲」「アイドルポップ」のようなものも頭から馬鹿にしていたが、アーティストの方は意外とそうでもなく、80年代の初めから、ニューミュージックのアーティストがアイドル歌手に曲を提供することは珍しくなかった。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
これはモータウンのように作者と歌手の分業体制から名曲が生まれることを知っていたアーティストが多かったからではないか?と思うのだが、どうなのだろう。いや、単純に「金になるから」と言えばそれまでだが。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
自身はテレビに絶対出ない山下達郎が、ジャニーズのアイドルにバンバン曲を提供するのは、彼が(音楽的に)敬愛するフィル・スペクターのやり方を知っていれば特に不思議はない。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
↑
あえて(音楽的に)と書いたのは、言うまでもなく、フィル・スペクターが殺人を犯し、獄中で晩年を過ごしたまま一昨年亡くなったからです…— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
そう言えば、大滝詠一が代表的演歌歌手の1人である森進一に「冬のリヴィエラ」を書き下ろしたのも、ロックと演歌の和解として1つの歴史的事件だったな。今聞くと、メロディとアレンジは隅から隅まで大滝詠一そのもの…
https://t.co/4WMPBithYh— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
まあそもそも大滝詠一や山下達郎は「ロック」ということで言えば辺境に位置する人たちだから話がややこしい。山下達郎が「シュガーベイブでフェスに出たとき、軟弱な音楽をやるなと石を投げられた」ことを根源的なトラウマとして語っていたくらいで…
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
山下達郎というのも本当にルサンチマンにまみれた人なのだが、彼の場合それがおかしな方向にねじれることなく、「音楽の力だけで有無を言わせないようにする」という方向に向かったことで、あれだけ磨き上げられた音楽を作り上げたのだから立派なものだが。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
ただ「テレビには絶対出ないし、配信も死ぬまでやらない」という頑固さ(偏屈さ)は、その屈折した心情から生まれたものだとは思う。
— ぼのぼの (@masato009) January 4, 2023
ネットの声
非常に読みやすかったです。日本音楽としての演歌やロックの歴史を追体験すること、またどのような進化と変遷を経て今に至ったのかを知ることが出来ました。50年…音楽そのものの歴史で見るとまだ若いジャンルですし、それが廃れていくということは、演歌もまた流行歌だったということなのでしょうね。
— かぶさん◢⁴⁶ (@KBZ46) January 5, 2023
演歌の興隆は有線放送の飲食店や酒場への浸透も大きかったと思います。いわやるリクエストシステムですね。歌い手が全国津々浦々のそれらの店を回り一曲歌いリクエストカードを置いてくる。また、中波ラジオの深深夜帯の長距離ドライバー向け「走れ!歌謡曲」「歌うヘッドライト」の開始も後押しに。
— Masami KATO / 天使突抜 (@aizomeyumeko) January 5, 2023
明治の「演歌」=「演説歌」
これと
現在の「演歌」(「艶歌」「怨歌」)=「韓国由来の歌謡曲」
は全くの別物
明治の演歌は一度途絶えた後、戦後に「流行歌」が現れ、高度経済成長と共に「歌謡曲」が現れる。
韓国系歌手がデビューするにあたり着物を纏い「日本の心」を強調したのが現在のもの。
— Az / A to Z Studio (@azmusicswitch) January 5, 2023
同じく巣鴨にJPOPやロックが流れる日は近いと思っています。
ただ、団塊ジュニア世代が長生きして、文化や商業的なことも少子化勢を圧倒する時代が続く様な気がします。
要は、紅白も暫くは今の形が続くのかなと。(そして3DCGシンガーみたいなのは子供向けで終わるかと)— ひょうたんから猫 (@atarashikumaehe) January 4, 2023
あれロックじゃないから。形がバンドなだけで、やってることは歌謡曲だから。
— iraira_suruna (@ISuruna) January 4, 2023
演歌の始まりは
戦時中に政府批判演説をしたら捕まるので、歌を歌っていると誤魔化す為に、演説を歌にしたものが
演歌になった。と高校生の時に歴史の先生に教わりました。
感受性豊かな時期だったので30年経っても先生のその雑談を覚えています。時代や背景によって文化も作られるのですね。
— ちー (@JGRGbmyR7qoOQ8W) January 5, 2023