カルト宗教であるオウム真理教が、企業の社長を洗脳し会社自体を乗っ取った事件である「オカムラ鉄工乗っ取り事件」について調査しました。
オカムラ鉄工乗っ取り事件とは？
1990年代の日本において、新興宗教団体であるオウム真理教が波紋を広げました。この宗教団体の指導者である麻原彰晃は、オカムラ鉄工株式会社という石川県能美郡寺井町（現在の能美市）に本社を置く油圧シリンダーの製造会社に経営面で関与しました。
1992年オウム真理教の在家信者だった岡村博男氏から相談を受けた、麻原彰晃は2ヶ月で無借金経営にすると宣言し、1992年9月14日に強引な手段で同社の社長に就任(また、村井秀夫が常務取締役に就任)し、会社を影響下に置くと共に、オウム化を進めました。会社内には教団のポスターや音楽が取り入れられ、従業員のほとんどが信者で固められました。
しかしながら、結果的に会社の資金繰りは悪化し、倒産へと向かいました。また、教団内での破戒した信者をオカムラ鉄工へ送る「落人制度」が考案され、この影響もあって約130名いた従業員のうち9割が退職してしまいました。
ヴァジラ・アヌッタラ ヒタ アビヴッディ精密機器工業に社名変更で完全にオウム化
その後、1993年に入るとオカムラ鉄工は社名を「株式会社ヴァジラ・アヌッタラ ヒタ アビヴッディ精密機器工業」へ変更し、ほぼ大半の従業員がオウム信者で固められました。教団のポスターが壁に貼られたり、教団の音楽が車内放送で流れるなど会社のオウム化を進められた。
●岡村博男元社長（左）と上祐史浩氏（右）
さらに工場にあった機械類も教団の拠点へ移され、会社事務所もオウム真理教南青山総本部に移転しました。後にこれらの機械を使用して自動小銃が密造される事件へと繋がっていきました。
岡村博男元社長のその後と後悔
1993年の2月末、岡村博男元社長は弁護士を通じてオウム真理教へ脱会届を提出し、債権者や元社員、親類宅などに対してお詫び行脚を行った。
債権者からは、「今さら返済をしてもらおうとは思わない。二度と顔をみせるな」と心無い言葉を浴びせられ、元社員からは「とんでもないことをしてくれた」と不景気の真っただ中に放り出されたことに対する恨みを抱くものが多かった。
岡村博男元社長は「会社」、「金」、「信用」を失い、26億円に及ぶ負債が残った。
この一連の出来事は、オウム真理教が経済や産業にも関与し、その影響を広げていたことを示す重要な出来事だったと共に、カルト宗教の洗脳の恐ろしさを後世に知らしめる事件となった。
